恋思 外伝 Alice in Wonderland

えー。

みなさんは、ご存知でしょうか。

「恋火」「恋思」を。

そしてこの二つを産みだしたＷあやせこと、

「君の歌は僕の詩」の綾瀬さん

と

「天然と計算のあいだ。」の彩世さん


の二人のあやせさんを。


「恋火」「恋思」はこの二人のぶろんちゅの緊急コラボ企画として、突発的に始まった、一連の小説のことなんですが。

大好評で、前二作にいろんな人が外伝を書き。

なんだかすごい波及っぷり。


まぁ、とにかく読んで欲しい！！！


……なんて言って、携帯から更新の身ではリンクを貼ることすら出来ず。


左のリンクから、まず「天然と計算のあいだ。」に飛び、そこから「恋火ワールド」をたっぷり堪能することをお勧めします。


読んで！！とにかく。





読んだ？



読んだ人だけ、続きをお読み下さい。はい。


えー、そんなこんなで。

すっかりアヤセマジックにはめられた私・ぷぅ。


今回、



外伝を書いてしまいました………。


いやー。


恥ずっ。



これ以上は、敢えて何も言うまい……。


じゃー、菩薩のように広く寛大な心を持つかたのみ…どうぞ。

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うさぎは走る 軽やかに

時計の針だけが 彼を急かす

彼はけっして振り向かず

だから 決して

少女に気付くこともない


◆◇◆◇◆◇

　

　

In Wonderland




少女はいつも少年を見ていた。

見ていた？


いや、違うかもしれない。

感じていた、とでもいうのか。
視界に入らなくても、同じ空間に彼が居る、ただそれが「わかる」。

少女の席は教室の真ん中。
少年の席は窓際の一番前。

どんな時でも、よく見える。

例えば、いま彼は、友人のひとりと話している。
今日のテストのこと？
彼も、そんなことを気にするんだろうか。


彼はいつも軽やかで

彼はいつも気取らずに

彼はいつもまっすぐに

彼はいつも…


　

私でない何かを見ている。

それとも、誰かを――？


「や、文学少女」

「ぅ」

「う、とは何よ」

「あの、ちょっとびっくりして」

「まったく――」

また不思議の国なわけ？と、この文学少女の唯一の友人は笑った。
仲のいい人は他にもいるけど、やっぱり「ともだち」とか呼べる存在は彼女だけかな、と、文学少女は思う。

「また見てたんだ」

――あの少年のことを話してるのも。

「うん…」

「かー、乙女だね」

なんて、明るく言う。さばさばした姐御キャラなのだ。

「ちょっと、オヤジ化してない？」

「あーやっぱり？」

この前も父さんの晩酌に付き合ってたらさぁ、なんて話しはじめた姐御には悪いけど。


「あ」

思わず驚きの声が漏れて、慌てて口を塞ぐ。

「な、なに」

姐御は芋焼酎の話を中断した。

「コレ」

「ん？Alice in wonderland……へ？」

姐御は存外すらすらと、文学少女の差し出した本のタイトルを読み上げる。

「持ってた！！…！！」

「ええ！？」

それだけですべてを把握したらしき姐御、それでも咄嗟に振り向いたりしないのは、素晴らしい状況判断。

「しかも、原版なの…！！」

自然に声を潜めて。

「英語？すごっ」


それもすごいけど。

何より、本当に偶然で同じ本を、あの少年と持っていたのが、ただそれだけで――


「ちょ…！目にゴミでも入ったの？」

わかってて、こんな風に言ってくれる。

「……ぅん、そうみたい」

何とか泣かずにすんだみたいだ。




でもね、私が泣きそうになったのはね――



穴に飛び込むうさぎを

アリスは一生懸命追い掛けたけど

うさぎはただ軽やかに

ただ一生懸命に

後ろの少女になんか気付きもせずに

ただ


何かに向かって走っていくんだよね



ただ それだけのこと。


ただそれだけのことだって、気付いたから、なんだ。 




fin.
◆◇◆◇◆◇◆